1960年のワールドシリーズ


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メジャーリーグベースボールの第57回優勝決定シリーズ

1960年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第57回ワールドシリーズ英語: 57th World Series)は、10月5日から13日にかけて計7試合が開催された。その結果、ピッツバーグ・パイレーツナショナルリーグ)がニューヨーク・ヤンキースアメリカンリーグ)を4勝3敗で下し、35年ぶり3回目の優勝を果たした。

両チームの対戦は、1927年以来33年ぶり2回目。7試合を通して、得点はヤンキースの55得点に対しパイレーツは27得点、打率はヤンキースの.338に対してパイレーツは.256、本塁打はヤンキースの10本に対してパイレーツは4本、といずれもヤンキースが圧倒していた[3]。しかしパイレーツは、敗れるときは10点以上の大差をつけられる一方で3点差以内の接戦はものにして、3勝3敗でシリーズの行方を最終第7戦までもつれ込ませると、その第7戦にはビル・マゼロスキーサヨナラ本塁打で勝利して優勝を決めた。ワールドシリーズでのサヨナラ本塁打は3年ぶり4度目で[4]、サヨナラ本塁打による優勝決定は史上初[5]、最終第7戦に限れば2024年現在も史上唯一である[注 2]

シリーズMVPには、第3戦でシリーズ史上最多の1試合6打点を挙げるなど、7試合で打率.367・1本塁打・12打点・OPS 1.054という成績を残したヤンキースのボビー・リチャードソンが選出された。2024年現在、シリーズ敗退チームからのMVP選出もまた、今回が史上唯一である。

1960年のワールドシリーズは10月5日に開幕し、途中に移動日を挟んで9日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月05日(水) 第1戦 ニューヨーク・ヤンキース 4-6 ピッツバーグ・パイレーツ フォーブス・フィールド
10月06日(木) 第2戦 ニューヨーク・ヤンキース 16-3 ピッツバーグ・パイレーツ
10月07日(金) 移動日
10月08日(土) 第3戦 ピッツバーグ・パイレーツ 0-10 ニューヨーク・ヤンキース ヤンキー・スタジアム
10月09日(日) 第4戦 ピッツバーグ・パイレーツ 3-2 ニューヨーク・ヤンキース
10月10日(月) 第5戦 ピッツバーグ・パイレーツ 5-2 ニューヨーク・ヤンキース
10月11日(火) 移動日
10月12日(水) 第6戦 ニューヨーク・ヤンキース 12-0 ピッツバーグ・パイレーツ フォーブス・フィールド
10月13日(木) 第7戦 ニューヨーク・ヤンキース 9-10x ピッツバーグ・パイレーツ
優勝:ピッツバーグ・パイレーツ(4勝3敗 / 35年ぶり3度目)
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・ヤンキース ピッツバーグ・パイレーツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 T・クーベック 1 B・バードン
2 H・ロペス 2 D・グロート
3 R・マリス 3 B・スキナー
4 M・マントル 4 D・スチュアート
5 Y・ベラ 5 R・クレメンテ
6 B・スコウロン 6 S・バージェス
7 C・ボイヤー 7 D・ホーク
8 B・リチャードソン 8 B・マゼロスキー
9 A・ディトマー 9 V・ロー
先発投手 投球 先発投手 投球
A・ディトマー V・ロー
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・ヤンキース ピッツバーグ・パイレーツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 T・クーベック 1 B・バードン
2 G・マクドゥガルド 2 D・グロート
3 R・マリス 3 R・クレメンテ
4 M・マントル 4 R・ネルソン
5 Y・ベラ 5 G・シモリ
6 B・スコウロン 6 S・バージェス
7 E・ハワード 7 D・ホーク
8 B・リチャードソン 8 B・マゼロスキー
9 B・ターリー 9 B・フレンド
先発投手 投球 先発投手 投球
B・ターリー B・フレンド
両チームの先発ラインナップ
ピッツバーグ・パイレーツ ニューヨーク・ヤンキース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・バードン 1 B・サーブ
2 D・グロート 2 R・マリス
3 R・クレメンテ 3 M・マントル
4 D・スチュアート 4 B・スコウロン
5 G・シモリ 5 G・マクドゥガルド
6 H・スミス 6 E・ハワード
7 D・ホーク 7 B・リチャードソン
8 B・マゼロスキー 8 T・クーベック
9 W・ミゼル 9 W・フォード
先発投手 投球 先発投手 投球
W・ミゼル W・フォード
両チームの先発ラインナップ
ピッツバーグ・パイレーツ ニューヨーク・ヤンキース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・バードン 1 B・サーブ
2 D・グロート 2 T・クーベック
3 R・クレメンテ 3 R・マリス
4 D・スチュアート 4 M・マントル
5 G・シモリ 5 Y・ベラ
6 S・バージェス 6 B・スコウロン
7 D・ホーク 7 G・マクドゥガルド
8 B・マゼロスキー 8 B・リチャードソン
9 V・ロー 9 R・テリー
先発投手 投球 先発投手 投球
V・ロー R・テリー

この日、ニューヨーク州ニューヨークヤンキー・スタジアムでシリーズ第4戦が行われている傍ら、ペンシルベニア州ピッツバーグピット・スタジアムではアメリカンフットボールNFLシーズン第3週ニューヨーク・ジャイアンツピッツバーグ・スティーラーズ戦が開催された。ワールドシリーズとNFLで同じ本拠地都市圏の対戦が同じ日に組まれるのは、1932年以来28年ぶり2度目である[注 4][6]。シリーズ第4戦ではパイレーツが3-2で勝利した一方、NFLではジャイアンツが19-17で勝利し、この日のニューヨーク対ピッツバーグは1勝1敗に終わった。

両チームの先発ラインナップ
ピッツバーグ・パイレーツ ニューヨーク・ヤンキース
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・バードン 1 G・マクドゥガルド
2 D・グロート 2 R・マリス
3 R・クレメンテ 3 B・サーブ
4 D・スチュアート 4 M・マントル
5 G・シモリ 5 B・スコウロン
6 S・バージェス 6 E・ハワード
7 D・ホーク 7 B・リチャードソン
8 B・マゼロスキー 8 T・クーベック
9 H・ハディックス 9 A・ディトマー
先発投手 投球 先発投手 投球
H・ハディックス A・ディトマー
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・ヤンキース ピッツバーグ・パイレーツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 C・ボイヤー 1 B・バードン
2 T・クーベック 2 D・グロート
3 R・マリス 3 R・クレメンテ
4 M・マントル 4 D・スチュアート
5 Y・ベラ 5 G・シモリ
6 B・スコウロン 6 H・スミス
7 E・ハワード 7 D・ホーク
8 B・リチャードソン 8 B・マゼロスキー
9 W・フォード 9 B・フレンド
先発投手 投球 先発投手 投球
W・フォード B・フレンド
映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
  ヨギ・ベラが6回表に3点本塁打を放ち、ヤンキースが5-4と逆転(50秒)
  8回裏、ロベルト・クレメンテの適時内野安打でパイレーツが6-7と1点差に迫る(38秒)
  クレメンテの次打者ハル・スミスに3点本塁打が出て、パイレーツが9-7と再逆転(1分10秒)
  9回表、ミッキー・マントルの適時打でヤンキースが1点差に追い上げる(22秒)
  ベラが一ゴロに倒れるも一塁走者マントルの好走塁で併殺を免れ、ヤンキースが土壇場で9-9の同点に追いつく(54秒)
  9回裏、ビル・マゼロスキーのサヨナラ本塁打でパイレーツの優勝が決定(1分45秒)
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・ヤンキース ピッツバーグ・パイレーツ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 B・リチャードソン 1 B・バードン
2 T・クーベック 2 D・グロート
3 R・マリス 3 B・スキナー
4 M・マントル 4 R・ネルソン
5 Y・ベラ 5 R・クレメンテ
6 B・スコウロン 6 S・バージェス
7 J・ブランチャード 7 D・ホーク
8 C・ボイヤー 8 B・マゼロスキー
9 B・ターリー 9 V・ロー
先発投手 投球 先発投手 投球
B・ターリー V・ロー

ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2011年10月、歴代のポストシーズン各シリーズについて、面白さの数値化を試みた。「1点差試合は3ポイント、1-0の試合ならさらに1ポイント」「サヨナラゲームは10ポイント、サヨナラが本塁打によるものならさらに5ポイント」「7試合制のシリーズが最終戦までもつれれば15ポイント」などというように、試合経過やシリーズの展開が一定の条件を満たすのに応じてポイントを付与することで、主観的ではなく定量的な評価を行った。その結果、今シリーズは84.5ポイントを獲得した。2011年リーグ優勝決定戦まで計262シリーズの平均45ポイントを上回っており、また1960年代10年間では最高の数字だった[7]

  1. ^ 殿堂入りは指導者としてではなく、捕手としての功績が評価されてのもの。
  2. ^ ワールドシリーズ優勝決定サヨナラ本塁打は、33年後の1993年トロント・ブルージェイズジョー・カーターが史上2本目を放っている。ただしカーターのはマゼロスキーと異なり、第6戦で記録されたものだった。
  3. ^ a b c d MLBにおいてセーブが公式記録となったのは1969年のことである。そのため、今シリーズでのセーブは参考記録である。
  4. ^ 1932年は10月2日に、ワールドシリーズではニューヨーク・ヤンキース対シカゴ・カブスが、NFLではシカゴ・ベアーズスタテンアイランド・ステープルトンズが、それぞれ開催された。
  1. ^ Richard Sandomir, "In Bing Crosby’s Wine Cellar, Vintage Baseball," The New York Times, September 23, 2010. 2018年12月2日閲覧。
  2. ^ AP, "Smith’s Homer Vs. Yankees Was Series’ Biggest – Briefly," CBS New York, October 11, 2010. 2018年12月2日閲覧。
  3. ^ Matt Snyder, "A look at all 15 walk-off home runs in World Series history," CBSSports.com, October 18, 2013. 2018年12月9日閲覧。
  4. ^ Gregor Chisholm, "After two decades, Carter's homer resonates / World Series-winning drive, just the second of its kind, hasn't faded into history," MLB.com, October 21, 2013. 2018年12月9日閲覧。
  5. ^ Barry Werner, "Houston, Philadelphia set to add to MLB and NFL history," The List Wire via USATODAY.com, November 2, 2022. 2022年11月27日閲覧。
  6. ^ Chris Jaffe, "The top ten postseason series of all-time," The Hardball Times, October 24, 2011. 2018年12月9日閲覧。