パトリック・シャナハン


ウィキメディアプロジェクトへの貢献者

Article Images

パトリック・シャナハンPatrick Michael Shanahan1962年6月27日 - )は、アメリカ合衆国政治家実業家。元ボーイング副社長。2017年7月から国防副長官(第32代)、2019年1月1日より国防長官代行を、2019年6月23日まで務めた[1]

パトリック・シャナハン

Patrick Michael Shanahan

生年月日 1962年6月27日(62歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ワシントン州
出身校 マサチューセッツ工科大学
称号 理学修士経営学修士

在任期間 2019年1月1日 - 2019年6月23日
大統領 ドナルド・トランプ

在任期間 2017年7月19日 - 2019年6月23日
大統領 ドナルド・トランプ
テンプレートを表示

シャナハンは生まれも育ちもワシントン州[2]、同州のワシントン大学にて機械工学で理学の学士を取得した。次いでマサチューセッツ工科大学にて機械工学で理学の修士を取得し、マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクールにてMBAを取得した[3][4]

シャナハンは1986年にボーイングへ入社し、コンピュータ・システム運用とボーイング777プロジェクトに関わった[5]。彼はそのキャリアにわたって、ボーイングのミサイル防衛システムのほか、ボーイング737、747、767、777、787の商用航空機のプロジェクトでマネジメント役を果たした[4]。またボーイング787プロジェクトの建て直しで陣頭指揮をふるい[6]、そこで2008年から「修繕男」(Mr. Fix-it) と呼ばれるようになった[7]

シャナハンはボーイングの商用航空機部門 (Boeing Commercial Airplanes, BCA) で副社長を務め、ボーイング757プロジェクトで757ファミリーのデザイン・製造・収益性の責任者としてゼネラルマネージャーを務めた[5]。彼はボーイング767プロジェクトとその製造部門でも指導的立場に立った[8]

シャナハンはペンシルベニアのボーイング・ロータークラフト・システムズで副社長を務めた[9]。彼は全ての米軍向け軍用機プロジェクト、およびフィラデルフィアとアリゾナ州メサでの会社運営の責任者だった[5]。そこで回されていたプロジェクトには、V-22 オスプレイ、CH-47 チヌーク、AH-64D アパッチがあった[9]

シャナハンは2004年12月からボーイング・ミサイル・ディフェンス・システムズで副社長とゼネラルマネージャーを務め、地上配備型ミッドコース・ミサイル迎撃システムレーザー搭載機によるミサイル迎撃プロジェクト、次世代型の戦術レーザー兵器プロジェクトを監督した[4][5]。彼はボーイング787ドリームライナー・プロジェクトで副社長とゼネラルマネージャーを務め、その開発期間にあたる2007年から2008年にかけてプロジェクトを率いた[5]。次いで、2008年12月からボーイングの商用航空機部門で航空機プロジェクトの上級副社長を務めた[10]

2016年4月、ボーイングのサプライチェーンと運用に関して上級副社長となった[10]。それは、次世代型の製造技術と世界規模での供給戦略を実行に移す[11]、製造および供給の責任者としてである[9]

シャナハンはボーイングの評議会 (Executive Council) のメンバーである[12]

 
フランスのフロランス・パルリ軍事大臣と(2019年3月18日)

2017年3月16日にトランプ大統領はシャナハンを32代国防副長官(国防省における文民の副トップ)に指名する意向を明らかにした[13] 。トランプは軍の拡充計画を主導してもらうためシャナハンを指名した[14]

上院の指名承認公聴会は2017年6月20日に開かれ、ウクライナへの武器供給を提案していたジョン・マケイン上院議員は、米国がウクライナへそうした武器を供給すべきか否かの質問に対するシャナハンの回答内容を取り上げ、シャナハンの指名を妨害すると脅した。シャナハンは、自分はその問題について決断を下すための軍の機密情報へのアクセスが無いと答えた[15][16]

オバマ政権で最後の国防副長官だったボブ・ワークは、シャナハンが承認されるまでその地位にあった[17]。シャナハンは2017年7月18日に92対7の投票結果により上院で承認され[18][19]、2017年7月19日に32代国防副長官になった[4]。その地位の者は、国防長官へ直接報告を行う[13][20]

トランプ大統領は、マティス国防長官の辞任が行われる2月28日にはシャナハンに国防長官代行に昇格させるだろうと真っ先に明らかにした。しかしトランプはその後12月23日のツイートで、マティスが明らかにした辞任日の2ヶ月前にシャナハンを昇格させると明らかにした。トランプがマティスとの決別を早めたのは、トランプの世界情勢観を批判したマティスの辞任コメント[1][21]に対する世論の(肯定的な)反応に立腹したからと伝えられている[22]。2019年1月1日に国防長官代行に就任[23]。2日の初登庁の際は中華人民共和国への対応を最優先にすべきとして「中国、中国、中国」( China, China, China.)と訓示した[24]。政権入り後、出身母体であるボーイングに便宜を図っているとする疑惑が浮上し、倫理調査の対象となった。2019年4月25日にまとめられたアメリカ国防総省監察官の報告書によれば、アメリカの主力戦闘機であるF-35(主契約社はボーイングのライバルであるロッキード・マーチン)の開発プログラムを酷評していたことが明らかになっている[25]

2019年5月9日、ホワイトハウスはシャナハンを国防長官に正式に指名することを発表した。軍需産業の出身者が国防長官に指名されたのは史上初であった[26]。しかし、同年6月18日にシャナハンの辞退を受けてトランプ大統領はマーク・エスパー陸軍長官を国防長官代行に新たに指名することを発表した[27]

  1. ^ a b Cooper, Helene; Rogers, Katie (23 December 2018). “Trump, Angry Over Mattis’s Rebuke, Removes Him 2 Months Early”. The New York Times (The New York Times Company) 27 December 2018閲覧。
  2. ^ Gates, Dominic; Brunner, Jim (17 March 2017). “Trump taps Boeing executive Pat Shanahan for deputy secretary of defense”. The Seattle Times (The Seattle Times Company) 26 December 2018閲覧。
  3. ^ “Trump taps Boeing executive Pat Shanahan for deputy secretary of defense” (英語). The Seattle Times. (16 March 2017) 22 May 2017閲覧。
  4. ^ a b c d Patrick Shanahan > U.S. Department of Defense > Biography”. United States Department of Defense. 6 October 2017閲覧。
  5. ^ a b c d e Boeing: Patrick (Pat) Shanahan”. Boeing. 16 June 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。22 May 2017閲覧。
  6. ^ Wilhelm, Steve (11 March 2016). “Two Puget Sound Boeing veterans who helped get 787 back on track promoted”. www.bizjournals.com. 22 May 2017閲覧。
  7. ^ Pae, Peter (24 February 2008). “Boeing uses him as its heavy hitter” (英語). Los Angeles Times. ISSN 0458-3035 22 May 2017閲覧。
  8. ^ “787 visionary out; new chief must make it fly” (英語). The Seattle Times. (17 October 2007) 22 May 2017閲覧。
  9. ^ a b c “Trump nominates Boeing VP for deputy Defense secretary”. TheHill. (3 March 2017) 22 May 2017閲覧。
  10. ^ a b Executive Profile | Patrick M. Shanahan”. Bloomberg.com. 23 December 2018閲覧。
  11. ^ Patrick (Pat) Shanahan | Board of Regents” (英語). University of Washington. University of Washington Board of Regents. 31 May 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。24 December 2018閲覧。
  12. ^ “White House picks Boeing executive as Pentagon’s No. 2” (英語). The Seattle Times. (16 March 2017) 22 May 2017閲覧。
  13. ^ a b Boyle, Alan (16 March 2017). “Boeing exec Pat Shanahan chosen to become deputy defense secretary” (英語). GeekWire 22 May 2017閲覧。
  14. ^ Drew, Christopher (1 April 2017). “A Pentagon Test for Boeing’s Mr. Fix-It”. The New York Times. ISSN 0362-4331 22 May 2017閲覧。
  15. ^ Herb, Jeremy (20 June 2017). “McCain threatens to block Trump's Pentagon nominee”. CNN 26 June 2017閲覧。
  16. ^ Kheel, Rebecca (20 June 2017). “McCain threatens to block Trump's deputy Defense nominee”. The Hill 26 June 2017閲覧。
  17. ^ “Trump Nominates Boeing Exec Patrick Shanahan For Deputy Defense Secretary” (英語). USNI News. (16 March 2017) 22 May 2017閲覧。
  18. ^ Carlson, Stephen (18 July 2017). “Former Boeing VP Shanahan confirmed as deputy secretary of defense”. UPI 23 December 2018閲覧。
  19. ^ Herb, Jeremy (18 July 2017). “Senate confirms the Pentagon's new No. 2”. CNN 18 July 2017閲覧。
  20. ^ Gates, Dominic; Brunner, Jim (16 March 2017). “Trump taps Boeing executive Pat Shanahan for deputy secretary of defense”. The Seattle Times 27 December 2018閲覧。
  21. ^ Schmidle, Nicholas (26 December 2018). “How Patrick Shanahan, the New Acting Secretary of Defense, Won Over the White House”. The New Yorker (Condé Nast) 27 December 2018閲覧。
  22. ^ Rucker, Philip; Lamothe, Dan; Dawsey, Josh (23 December 2018). “Trump forces Mattis out two months early, names Shanahan acting defense secretary”. The Washington Post 27 December 2018閲覧。
  23. ^ シャナハン米国防長官代行が1日就任 軍歴なく、不安視する声も”. 産経新聞 (2018年12月31日) 2019年1月1日閲覧。
  24. ^ “Remember: "China, China, China," new acting U.S. defense secretary says” (英語). ロイター. (2019年1月3日) 2019年5月11日閲覧。
  25. ^ 米国防長官代行、F35開発計画を酷評 機種自体は「素晴らしい」”. CNN (2019年4月26日). 2019年5月3日閲覧。
  26. ^ “米大統領が国防長官にシャナハン代行指名へ、防衛業界出身は初めて”. ロイター. (2019年5月9日) 2019年6月6日閲覧。
  27. ^ “シャナハン氏が国防長官辞退、代行にエスパー氏-米大統領”. ブルームバーグ. (2019年6月19日) 2019年6月19日閲覧。
公職
先代
ジェームズ・マティス
  国防長官
代行
2019年1月1日 - 2019年6月23日
次代
マーク・エスパー
代行
先代
ロバート・ワーク英語版
  国防副長官
2017年7月19日 - 2019年6月23日
次代
デイビット・ノークイスト英語版
代行